研究概要 |
1. 1次元ディリクレ形式のスムース測度,エネルギー測度が絶対連続であり,その密度関数が一致している場合,即ち,1次元変形ブラウン運動についての研究を行った.変形ブラウン運動において興味ある現象を示す例では,尺度関数と速度測度が共通の不連続点を持っており,小倉幸雄氏の双一般化拡散過程の理論(1989)の大前提である「尺度関数と速度測度が共通の不連続点を持たない」ことに反する.小倉幸雄氏の理論をそのまま適用することは出来ないので,これを避けるために,グラフ上の拡散過程を考察することにより,双一般化拡散過程の理論を適用できることが分かった. 2. 拡散過程の条件付漸近分布について,これまでに得られているクラスよりもかなり広いクラスの拡散過程に対して適用可能な結果を導いた.広義拡散作用素のスペクトルが離散的な場合は,到達確率の条件付きで考えると非自明な極限分布が現れることが特別な例の場合には直接計算で得られていた.これを一般化することができた.広義拡散過程の速度測度が正則変化する場合には,到達確率の条件付きで考えると,適当な補正関数を伴った極限過程としてベッセル過程から導かれるmeanderになることを示した。 3. フラクタル格子でのパーコレーションの研究を行った.シェルピンスキーカーペット格子において,方向性のあるパーコレーションでは相転移が消滅する場合があることを以前の論文で証明したが,この消滅現象がより一般的な条件の下で起こる(具体的には,フラクタルとして取り除かれる部分の大きさに依存しない)ことの証明に取り組んだ.その結果,証拠となりうるいくつかの命題を得た.
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