反応拡散方程式系におけるパターン形成の問題として、ギーラーマインハルト系の安定スパイク解について研究を行った。その過程で、リーゼガング現象という空間1次元では、指数則に従う縞模様のできるおもしろい現象として、1896年頃から知られていたものである。まず、大西は、その指数則が成立することを数学的に厳密にモデル方程式である、Keller-Rubinowモデルから、証明することに成功した。結果は、数理解析研究所の講究録や国際研究集会(Equadiff 11)のプロシーディングにまず、報告した。また、明治大学理工学部数学教室のプレプリントシリーズにして頂き、主な研究室、研究者に配布した。その後、空間2次元における、この現象の様々なパターン形成に興味を持ち、新しいモデル方程式を構築した。そのシミュレーション結果は非常に興味深いものであった。実際の化学実験を行うと、リングパターンにはある種の欠損を生じるのであるが、それは、化学実験の非一様性(実験室では真に一様な状況は実現できないなどのことを意味する)のせいであると簡単にすまされてきた。しかしながら、我々のモデルのシミュレーション結果では、そのような欠損は、この系においては、系の時間発展のメカニズムに内在された法則から、自発的に生成されうるものであることを示唆していた。実際、初期値のわずかな非対称性が時間とともに拡大、拡張され、化学実験においてみられるような定性的な性質を持った欠損が再現された。このことは、コロイドの物理を考察した結果であり、もとのKeller-Rubinowのモデルでは、再現されていなかった。この結果から、リングパターンは本質的な不安定性を抱えており、欠損が本質的に発生しうるものであることが予想された。その結果、2次元においては、リングパターンよりもコロイドクラスタが空間に市松状に並んだパターンが自然であると予想し、実際にシミュレーションで実現して見せた。
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