研究概要 |
「多次元複雑系のモデルである可算生成分割を保持する非双曲型・非可逆離散写像に対し、"初期値に関する劣指数的鋭敏性"により引き起こされる相転移現象をMultifractal Formalismを介在して特徴付ける」という目的を、生成可算分割がマルコフ分割であるという条件の下で達成し、その結果を論文"Phase transition, Non-Gibbsianness and Subexponential Instability"に発表しErgodic Theory and Dynamical Systemsに受理され掲載予定(2005年)である。「統計力学における標準的なGibbs性の崩壊が、直接劣指数的鋭敏性により引き起こされるポテンシャルのクラスを定式化する」という目的に関しては、平衡状態の可逆拡張に対し、Pesin-Sinaiらによって定式化されたu-Gibbs性の成立を示す事により達成し、その結果を論文"Non-Gibbsianness of SRB measures for the natural extension of intermittent systems"に発表しErgodic Theory and Dynamical Systemsに掲載予定(2005年)である。更に、Large deviation theoryを利用して、マルコフ性を持つ双曲型の力学系に既にMultifractal Formalismを達成しているGottingen大学のM.Denker氏を9日間ほど招聘し情報交換をした事により、生成可算分割のマルコフ性が崩れた場合に大変興味深い複雑現象が起こる事が確認でき、新しいタイプの極限集合の定式化の必要性を認識するに到った。
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