研究概要 |
本研究は禁止部分グラフと因子の関係を明かにすることを目的とした。特に初年度は「任意の偶位数の連結なH-フリーグラフは1-因子を持つ」という命題を成立させるHの決定を目指した。 上記目的は完全に達成された。それは以下の定理で表される。 定理 連結偶位数のH-フリーグラフGが完全マッチングを持つならば、HはK_<1,2>もしくはK_<1,3>である。 さらに上記の結果を拡張することもできた。具体的には以下の成果で表される。 1.グラフGとその最大マッチングMに対し、Mの辺に接続しない頂点の個数をGのdeficiencyとよぶ。与えられた定数n対し、「偶位数の連結なH-フリーグラフのdeficiencyがn以下ならば、H=K_<1,m>(m≦f(n))である」ことを示した。関数f(n)の値を完全に決定することにも成功した。特にf(0)=3である。定義よりグラフGのdeficiencyが0であることとGが完全マッチングを持つことは同値なので、この拡張は上の定理を包含している。 2.2個のグラフを禁止した場合、すなわち「任意の偶位数の連結な{H_1,H_2}-フリーグラフは1-因子を持つ」という命題を成立させるグラフの組{H_1,H_2}を調べた。その結果H_1,H_2のいずれか一方は、上の定理に現れるK_<1,2>もしくはK_<1,3>であることが判明した。このとき上の定理より、他方はどのようなグラフであってもかまわないことになる。すなわち2個のグラフを禁止しても、状況は1個のグラフを禁止した場合と変わらない、という興味深い事実を得た。 以上のように、本研究は初年度の目的を達成し、さらにはそれを発展することにも成功した。
|