研究概要 |
今回の研究の目的は,確率論,解析学,変分幾何,数論,計算機科学のそれぞれの専門分野から総合的に応用に適した無限次元確率解析を共同研究し,情報論,量子情報論,複雑系への新しいアプローチをすることにある.得られた成果として,1)数理ファイナンスで重要な役割を果たすFractional Brown運動と無限次元ラプラシアンの一つであるレヴィ・ラプラシアンとの関係を与えた.この関係は無限次元Fractional Ornstein-Uhlenbeck過程を構成することにより得られる.(Quantum Information Vに掲載予定)2)レヴィ・ラプラシアンの生成する無限次元確率過程をホワイトノイズ値関数の空間上に構成した(Quantum Information and Complexityに掲載予定)3)レヴィのラプラシアンの和を生成作用素としてもつ確率過程を無限個のBrown運動を用いて構成することが出来た.4)ファインマン経路積分の超関数的計算方法を量子場の理論へ応用し,レヴィ・ラブラシアン,ヴォルテラ・ラブラシアンを共に含む方程式を導いた.これはシュレディンガー方程式に代わる方程式として興味深いものとなっている.その他,確率変分方程式,無限列に関する情報量の研究との関連において複雑系の研究において進展がみられた.また,海外の共同研究者Kuo教授との共同で,ホワイトノイズ作用素解析の観点から量子確率論の研究を引き続き進めている. 上記研究を進めるにあたり,毎週セミナーを開催し,共同研究者の間の交流をはかり,研究をすすめた.海外共同研究者のKuo教授には,無限次元確率解析に関するレビューを依頼した.補助金使用の内訳としては,計算機の購入,ドイツ・チュービンゲン大学での国際シンポジウム開催および研究発表に対しての旅費,米国ルイジアナ州立大学での集中講義および共同研究に対しての旅費,国内シンポジウム,学会出張に関する旅費,Kuo教授の確率解析に関するレビューに対する謝礼,その他に使わせて頂いた.
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