研究概要 |
有限射影平面は、有限幾何学における重要な結合構造である。有限射影平面の位数が素数べきであるという有名な予想があるが、解かれていない。この予想を与える根拠は、BruckとRyserによる定理であるが、説得性に乏しい。この定理で、その存在・非存在を証明出来ない位数を小さいものから順にあげると、10,12,15,…である。位数10の射影平面は多くの数学者により研究され、最終的には1989年にLamたちによってコンピュータを用いてその非存在が証明された。1980年代の前半、Jankoとvan Trungは、一連の論文で、位数12の射影平面の自己同型群の可能性を調べた。現在得られている最良の結果は、Horvatic-BaldasarとKramerとMatulic-Bedenicによる次の結果である。位数12の任意の自己同型群の位数は16または、9を割りきる。筆者は、位数12の射影平面の自己同型群の位数が16であることはないということを示した。それは、次のようにして証明された。もし位数16の自己同型群をもつ位数12の射影平面が存在したとすると、位数8の自己同型群が半正則に作用する72個のランと12個のファクターと6個のレベルを持つ直交配列が存在するのだが、このような直交配列は存在しないことを、コンピュータの助けを借りで示した。この手法は、位数8の自己同型群を持つ、位数12の射影平面の研究に対しても適用出来るので、現在考察中である。ただ、条件がゆるくなるので計算は大変である。そこで、上記のパラメータを持つ直交配列の構造をもっとくわしく調べる必要がある。
|