研究概要 |
有限射影平面で最も基本的で重要な問題の一つは,有限射影平面の位数が素数べきであるという予想である。この予想の根拠となる定理はBruckとRyser(BR)の定理であるが,充分根拠のある定理とは言いがたい。小さい非素数べき位数から考えよう。位数6の射影平面はBRの定理によって非存在。位数10の射影平面は多くの数学者の努力の結果,最終的には,1989年にその非存在がLamとThielとSwierczによりコンピュータを使って証明された。使われた数学的理論は符号理論である。位数12の射影平面があるかどうかはわかっていない。1980年代にJanko and Trungは一連の論文で位数12の自己同型群の可能性を調べた。Horvatic-Baldasar等は更にこの研究を発展させ,次のことまで明らかにされた。位数12のの射影平面があるとすると,その任意の自己同型群の位数は16または9の約数である。筆者は2004年に位数12の射影平面は位数16の自己同型群を持たないことを示した。このことを示すのにあるタイプの直交配列OA(72,12,6,2)が存在しないことを示した。OA(72,12,6,2)の存在は対称横断デザインSTD_2〔12;6〕の存在と同値である。そこで,位数12の射影平面の研究にはブロックサイズが12の対象横断デザインの研究が重要になる。具体的には,STD_6〔12;2〕,STD_4〔12;3〕,STD_3〔12;4〕,STD_2〔12;6〕,STD_1〔12;12〕である。これらは相互に関係を持っている。しかも,STD_1〔12;12〕の存在は位数12の射影平面の存在と同値である。STD_6〔12;2〕は位数12のHadamard行列と同値な概念である。まず,STD_4〔12;3〕は何個あるか,またそれらの全自己同型群がどうであるかを調べた。1個であり,その全自己同型群はpoint classes上可移であることがわかった。最近,位数2のgeneralized elationを持つSTD_3〔12;4〕も分類した。秋山献之氏とは大きいある群を持つpoint classのサイズが3の対称横断デザインを調べた。この中で新しい(21,3,21,7)-semiregular relative difference setを発見した。
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