研究概要 |
当該研究課題に関する平成15年度の研究実績の概要は,次の通りである.円環上の実ハーディー空間に属する関数のフーリエ級数展開を考える.このとき,第n番目の係数をnで除した値のすべてのnに渡る総和は収束し,その和は元の関数の実ハーディー空間のノルムで押さえられる.これは,ハーディーの不等式として知られるものである.我々は,この不等式をヤコビ多項式の作る直交関数系へ一般化することが出来た.この成果は学術雑誌において印刷中である. さらに,ハンケル変換に関する移植定理を実ハーディー空間において示すことに成功した.移植定理とは二つの直交系を考えたとき,おのおのの直交系における展開が,考えている空間のノルムに関して同値であることを主張する定理である.この定理を示すことが出来ると,一方の直交系において得られている成果が自動的に,他方の直交系においても成り立つことが示される.直交展開の調和解析における有効な道具である.ハンケル変換とは,その特殊な場合としてフーリエ変換を含む有用な積分変換である.そして,実ハーディー空間及びその理論は,近時調和解析において得られた成果の大きなものの一つである.実ハーディー空間における作用素の評価は,補間によって,ルベーグ空間における対応する評価を導く.我々は,これら有用な枠組みにおいて,移植定理を得たものである.この成果は,学術雑誌に投稿中である. また,移植定理とは移植作用素の有界性を主張する定理と言える.この作用素は,ヒルベルト変換の一般化とも捕らえることが出来る.ヒルベルト変換は,ある条件を持つ関数を可積分関数に写すことが知られている.これを移植作用素に対し示すことを考察中であり,成果が得られると予想している.
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