研究概要 |
1.Banach束に値をとる正値ベクトル測度のテンソル積測度がBorel測度に一意的に拡張できるための十分条件を発見した.このBorel拡張測度を用いて,ある種のBanach代数に値をとるベクトル測度に対して合成積測度を定義し,その積分表示をBartleの双線形積分を用いて与えた.さらに,ベクトル測度の合成積を作る演算が,測度の弱収束に関して同時連続であることを示した. 2.Bartleによる双線形ベクトル積分の理論とベクトル測度の正値性を有効に活用することにより,ある種のBanach束に値をとる正値ベクトル測度のテンソル積測度を作る演算が測度の弱収束に関して同時連続となることを示した. 3.完備可分距離空間上で定義され,ある種の半Montel空間に値をとるベクトル測度の集合が測度の弱収束に関して(点列)コンパクトとなるための必要十分条件をいくつか与えた(Prokhorov-LeCamのコンパクト性判定条件の拡張).特に,上記ベクトル測度の集合が一様有界かつ一様緊密であるための必要十分条件は,対応する実測度からなる集合が測度の弱収束に関して相対点列コンパクトであることを示した. 4.測度の弱収束と同値な条件をまためたPortmanteau定理が,Dedekind complete Riesz空間に値をとる正値ベクトル測度に対しても成立することを示した.この結果により,ノルム構造ではなく順序構造がPortmanteau定理の成立を保障する本質であることが認識された. 5.ベクトル測度の弱収束の理論の最近の展開についてまとめた.内容は以下の通りである:第1章:序論,第2章:ベクトル測度に関する定義と基本的性質,第3章:Prokhorov-LeCamのコンパクト性判定条件とVaradarajanの距離付け判定定理のベクトル測度への拡張,第4章:ベクトル測度のinjectiveテンソル積の測度の弱収束に関する同時連続性(値域空間が核型空間の場合とBanach束の正推の場合).第5章:ベクトル測度に対するStrassenの定理. 6.完全正則空間上の有界連続関数全体の作るBanach空間からDedekind complete Riesz空間への正値線形写像がベクトル測度で一意的に表現できるための必要十分条件(緊密性の条件)を与えた.
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