研究概要 |
本研究の課題は放物型作用素の解の構造の解析と熱方程式の平均値の性質である.前者については,昨年度に得られた上半空間での結果の改良や帯状領域への一般化などにおいていくつかの成果を得た.後者の平均値の性質については,分担者との議論を通して,問題点が明白にはなって来たが,克服すべき課題も多く残った. 1.分担者の大阪市大の西尾昌治と茨城大の下村勝孝の協力を得て,上半空間上の放物型作用素に関するベルグマン空間についてのHuygens property,基本解の評価,双対空間の特徴付け,再生核の具体的表示などの基本的結果をまとめてOsaka Mathematical Journalに発表した(2005年出版予定).また,これまでの結果においては空間次元が2以上という技術的な条件が付いていたが,調和測度の回転普遍性に注目してこれを取り除くことに成功した.これに続いて,帯状領域におけるベルグマン核の評価を行い,平成16年8月に島根大学で開かれたIWPT in Matueで講演発表した.この他に,放物型作用素に関するGleason problemについても広島大学で行われた第8回実複素解析国際会議で成果発表を行った. 2.熱方程式の平均値の性質に関する密度関数の存在について,昨年度からの研究成果を平成16年9月にチュニスで開かれた6th Pan-African Congress of Mathematicsで発表した.定数の密度関数を持つ領域は存在しないと思われるが,まだ明白な結論は得られていない.また,熱方程式の正値解の可積分性の問題や,正値調和関数の可積分性とポテンシャルの可席分性が同値か否かという問題などが次年度の課題である.
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