研究概要 |
複素エルゴード理論において基本的な概念となる、力学系のもとでの不変測度は、多次元の複素力学系においては、超関数を係数とする微分形式、すなわちカレントと呼ばれるものとなる。本研究においては、(1,1)型微分形式で超関数を係数とするもののうち、もっとも力学系の性質を反映するものと考えられるいわゆるグリーンカレントについて考察した。無限遠直線において正則な、複素2次元の多項式で与えられる複素力学系にたいして、ベットヒャーの定理を拡張し、固有のベットヒャー形式が存在する事を示し、それが(1、0)型の微分形式で表示できることを明らかにした。この微分形式を超関数の意味で反正則外微分をすることで、グリーンカレントがえられる。これは、グリーンカレントの部分積分を与えた事に相当する。カレントの超関数表宗、すなわちハイパーカレントを具体的に与えた事になる。シュワルツの意味の超関数を係数とするカレントに対し、佐藤超関数を係数とするものをハイパーカレントと呼ぶ事にしたい。この結果は、"Hyper-currents and Boettcher's functions for higher dimensional complex dynamical systems"として、ドイツのゲッチンゲン大学で2004年11月24日に発表した。また、このハイパーカレントは、ジュリア集合の層係数コホモロジーを定義し、力学系の層係数コホモロジーへの作用の行列式が、力学系のゼータ関数のなることも明らかとなった。この結果は"Complex dynamical systems acting on hyperfunctions"として2004年12月3日にフランスのパリ大学理学部において発表した。
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