研究概要 |
1.猪狩は複素n次元空間における偏微分方程式の解について,重複度の変わるある種の特性曲面における特異性が除去可能であることを示した。特性指数が非負整数でない場合について以前本人が証明した結果が,非負整数の場合にどうなるかを考察したものである。特性面である条件を満たすデータに対する正則解の一意存在を示す定理を準備し,それを用いて解析接続により除去可能であることの証明を与えた。この一意存在定理は実n次元空間での,初期面が多重特性的である場合の,コーシー問題の超関数解の一意性にも関係しており,現在その研究を進めている。天野は他の研究者とともにポテンシャル問題の高精度高速解法として知られている代用電荷法を適用して,非有界多重連結領域とさまざまなスリット領域との間の数値等角写像の方法を提案しその有効性を数値実験的に検証した。伊藤は複数個のデルタ型磁場をもつシュレディンガー作用素に適当な境界条件を課し、各磁場の中心を十分離した場合の散乱振幅の漸近挙動を解析し、具体的に主要部を与えた。中心が固定された複数個のデルタ型磁場による散乱振幅の高エネルギーでの挙動もこの結果より得られる。定松は退化放物型標準形に対するコーシー問題の適切性にりいて考察し,適切であるための必要条件を方程式の副主部と正のトレースとを用いて与えた。萬代はフックス型変数を2つ以上持つような線形偏微分方程式について,零解(第1象限にのみ台を持ち,原点が台に含まれる解)を構成した. 2.2年目は実空間での偏微分方程式の解の一意性と非一意性に関する研究を進める。非一意性については曲面の片側で恒等的に零となる非自明な解の存在を示す必要があり,上記の正則解の一意存在を示す定理の証明法が一部有効になると予想される。
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