| 研究概要 |
研究課題「バナッハ空間の構造論とノルム不等式の研究及びその応用」について、研究代表者は、研究分担者の協力のもとに数々の成果を得た。これらの成果は、日本数学会、京都大学数理解析研究所研究集会、実解析シンポジウム、実解析学シンポジウム、関数空間セミナー、などで口頭発表、また、数理解析研究所講究録、北海道大学数学講究録、などの国内雑誌、及び、J. Inequal. Appl., J. Math. Anal. Appl., J. Nonlinear and Convex Anal., Colloq. Math., Math. Nachr.,などの国際雑誌で発表した(発表予定を含む)。以下に、その概要を述べる。
1.関数空間L_pのノルム不等式として知られるHanner不等式の一般化を、バナッハ空間で定式化し、それらを用いて空間の様々な幾何学的性質を特徴づけた。また、これらの不等式の双対性も考察した。
2.バナッハ空間の一様正規構造は、非拡大写像の不動点性を導くことから応用面でも重要である。種々の幾何学的定数(あるいは関数)を導入し、正規構造係数を評価した。また、これらの定数(あるいは関数)を用いて、一様凸性、一様平滑性、一様非四辺形性などの幾何学的性質の特徴づけを与えた。
3.Clarkson不等式との関連で導入されたTongeのrandom Clarkson不等式(RCI)は、その後、(Rademacher)typeとの関連で一般化・精密化が考察された。我々は、strong typeの概念を導入することにより、strong random Clarkson不等式(SRCI)を提案し、SRCIが成立するための必要十分条件を与えた。
4.バナッハ空間の幾何学的性質(一様非四辺形性等)の安定性をBanach-Mazur距離との関係で考察した。
その他、種々の不等式の一般化、及び、関数空間の構造、微分作用素のHyers-Ulam stability、ベクトル値エルゴード定理、などへの応用を試みた。
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