研究概要 |
本研究の目的は作用素不等式とlog-hyponormal作用素等の研究である。 棚橋、内山は長、J.I.Lee,内山充らと共同してp-quasihyponormal,class A,class A(s,t),(p,k)-quasihyponormal operator等のスペクトルの研究を行った。特にp-quasihyponormal,(p,k)-quasihyponormalの孤立点スペクトルに対応するリース作用素の性質を決定し、0以外ではリース作用素は自己共役であることを示した。また、Class A作用素のスペクトルを決定したので今後のClass A(s,t)作用素の解析に役立つと思われる。 三浦はノイマン環間の順序同形がどれくらい代数構造を決定するかという問題に取り組み、非可換L^2空間においてもKadisonの定理が成り立つことを証明した。これは環における順序構造が標準化された線形空間にも適用できるという意味をもつ。また証明の過程でConnesの正錐に関する結果を、非可分な空間まで拡張した。また、S-E.Takahasi, T.Miuraと共同して、G.Ladasらによって提起された3項間の非線形差分方程式に関する研究の中の収束問題に取り組み、従来よりエレガントな手法で解決しただけでなく、それまでの有理式のものよりかなり一般化された関数における収束問題と捉えて証明を与えた。しかも、その応用範囲も広く、特に数理生物学における(時間おくれのある)多種間競争モデルの研究に重要な契機となった。このことは、ロトカ・ボルテラ型タイプの微分方程式で与えられるモデルよりも、離散型の特徴はより自然な記述と考えることができ、今後の発展的な研究につながると考える。更に、石川、大西と共同して、正錐M_2(R)^+を保存する意味で行列に順序を定義し、2つの半正値行列がこの順序に関してオーダーが付いているならば、ある実数以上の冪についても不等式が成り立つことを証明した。 武元は「二つのフォン・ノイマン環の間のある種の準同型写像が漸近的に内部写像になるか」という問題の解決に向けての研究を行い、「作用素の数域の研究結果とフォンノイマン環の前共役空間との関係」を引き続き調べた。
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