研究概要 |
本研究課題は複素平面の単位円板における解析関数空間上の線形作用素の関数解析的性質をその定義域である解析関数の持つ性質で特徴付けることを目的とする.本年度の研究実施計画にしたがって得られた知見について,以下まとめる.1.K.Slroelhoff(米Montana大学),R.Zhao(米Toledo大学)らと引き続き行ったsmall Bloch空間上における合成作用素の有界性などの特徴付けは,古典的なZygmundクラスの関与する結果を得た.この結果を2003年12月京都大学でJ.H.Shapiro(米Michigan state大学)を招いて開催された「Topics on holomorphic spaces and composition operators」において口頭発表したところ,同様の問題が韓国数学者によっても研究中であることがわかった.得られた結果が豊富なため,取りあえず同じタイプのsmall Bloch空間間の場合を現在論文化している.異なる空間間の場合はその後まとめる予定とした.2.J.S.Choa(韓Sung Kyun Kwan大学)とBloch空間からHardy空間への荷重合成作用素も引き続き行ない,氏が7月に新潟大学を訪問した際にも検討を行ったが,まだ解決にいたらない.また,その際改めてHardy空間間の荷重合成作用素の関数論的特徴付けも提起された.3.(a)新潟大学理学部の泉池敬司との共同研究「有界解析関数空間上の荷重合成作用素の位相構造」において豊富な結果を得た.これは先駈けとなった大野の「荷重」のない「合成作用素」の場合の拡張であるが,まず荷重合成作用素の差のcompactness, weak compactness, complete continuityの同値性が確認された.そして,位相構造については荷重(乗法作用素)のために,予想できなかった挙動が確認された.大野の結果は関数環の研究者によって拡張されているが,この場合も新たな問題を提起するものと思われる.(b)泉池,Choaと共に「有界調和関数空間上の荷重合成作用素」についても研究を行い,Poisson積分を利用して乗法作用素を定義するという新しい方法によって荷重合成作用素を定義し,その有界性,compactnessを特徴付けることを開始した.この定義は積が定義できない調和関数において,新たなる研究の将来を持つことが予想される.(c)大野の研究「有界解析関数空間上の合成作用素の位相構造」について新潟大学理学部の細川卓也よりBloch空間への拡張が提起され,氏と共に研究を試み,合成作用素の差のcompactnessを完全に特徴付けた.その特徴付けがSchwartz-Pick型の不等式が道具になったことから,いろいろな話題との関係が予想される.この結果は12月京都大学で開催された上述の研究集会において口頭発表された.位相構造については,次年度への課題となった.
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