研究概要 |
研究期間中に行った,周期係数をもつ二階楕円型微分作用素のグリーン関数の遠方での漸近形に関する結果について述べる.これは,研究課題であるシュレディンガー方程式の基本解の特異性からは少し方向性が異なる結果であるが,漸近解析また超局所解析の観点からは同じ範疇に入り,ここでの手法や結果は研究課題の遂行に応用されると考えられる.14,15年度,村田實数授と共同で,危値と呼ばれる値未満のスペクトルパラメータの場合と,スペクトルパラメータが危値に等しいときは空間次元が3以上であることを仮定し,周期係数をもつ二階楕円型微分作用素の正値グリーン関数の遠方での漸近形を求め,それを用いてマルチン境界の決定した.これは今年風,J. Diff Eqs.に掲載された.今年度において村田實教授と共同で,周期係数をもつ二階楕円型微分作用素が自己共役である場合,危値より大きく危値に十分近いスペクトルパラメータに極限吸収されたグリーン関数の遠方での漸近形を求めた.証明は,ブロッホ変換された微分作用素について準運動量変数がゼロ付近の第一固有値の挙動とゼロ点の様子を調べ,解析的フレドホルム定理と留数定理により主要項を抜き出し,停留位相法によって漸近展開を得る,という方法である.研究費の主な使途は,東京工業大での村田實教授との研究打ち合わせ,京都大数理解析研究所での研究集会への参加,筑波大での学会においてシュレディンガー方程式に関する講演への参加,また偏微分方程式関係の文献購入や文献複写である.これらの研究集会でシュレディンガー方程式の波面集合に関する研究など興味ある研究に触れることができ,これらの詳しい解析を来年度に行っていく.
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