研究概要 |
半線形拡散方程式の爆発問題は,藤田宏氏による1960年代後半の結果以来,非常に多くの研究が為されている.今なお,半線形拡散方程式の中心的問題であり,多くの研究者によって取り扱われている.本研究においては,爆発集合の位置の特徴付けという問題を研究した.この問題は一般的な枠組みで扱うことが難しい.そこで,研究代表者石毛は,東京学芸大学の溝口紀子氏,京都産業大学の柳下浩紀氏らと共に,拡散係数が十分大きい場合について考察することにし,爆発集合の位置についてノイマン境界条件のもとで特徴付けを行った.これにより,有界領域において,ノイマン条件の下で拡散係数が十分大きいならば,解の爆発集合は,初期値の第2ノイマン固有空間への射影の最大点の近くのみに存在することが示された.ここで,初期値の第2ノイマン固有空間への射影の最大点は,線形熱方程式の解の最大点の極限として特徴付けることが可能である.このような,固有関数の形状と爆発集合の位置との密接な関係が示されたのは,本研究が初めてであり,興味深いものと考える.また,非有界領域における半線形拡散方程式への応用を視野に入れながら,熱方程式の解の形状,特に解の最大点の挙動について,球の外部領域において研究を行った.一般に,非有界領域については,固有関数を用いた解析手法が有効でないため,また熱方程式のグリーン関数について得られる情報の少なさ故に、解の最大点挙動について研究を行うのは,球の外部領域という最も簡単な場合にでも難しかった.しかしながら,研究代表者石毛は球の外部領域にっいては,ノイマン境界条件,ディリクレ境界条件共に,最大点の挙動について詳しく研究を行った.この結果を受け,調和関数と解の最大点挙動の関係が明らかになり,大阪府立大学の壁谷喜継氏とともに,低階項を加えた場合の,解の微分の減衰の早さ及び解の最大点挙動について研究を行った.この研究より,調和関数の形状,特に調和関数の空間変数無限大における増大度が解の微分の減衰の早さや解の形状に強い影響を与えていることが明らかになり,またそれらのその決定メカニズムが明らかになった.
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