研究概要 |
時間について周期的な非柱状領域におけるn次元非線形波動方程式の解の大域的挙動の研究において、空間次元nが1,3で、球対称で時間周期的な非線形強制項をもつ場合の境界値問題の周期解が存在するという興味ある結果(強制振動の存在)が得られている(2002、M.Yamaguchi)。 本年度は次の2つの結果を得た。 (1)本年度目標にしていた空間次元nが1,3の非線形波動方程式の空間について球対称な柱状領域における自由振動(Free Vibration)を研究し無限個の時間周期解の存在を示した。過去においては、n=1のとき周期と定義区間の比が有理数のときは、P.H.RabinowitzやK.Tanaka等よって、また比が無理数のときはC.WayneやW.Craig等によって無限個の周期解が得られている。空間次元が2以上のときはポテンシャルがある場合J.Bourgainの結果があるのみで、ポテンシャルをもたない方程式に対して結果は得られていなかった。この問題について、我々の予想していたとおり、波動方程式に対応するある常微分方程式の周期解の詳しい評価と、さらに周期に関する精密な数論的評価と、ベッセル関数の零点と周期についての数論的条件を用いて、可算無限個の周期を構成し、個々の周期に対して、変換された波動方程式の周期解の存在を示すことによって、無限個の周期解の存在を証明した(論文投稿中)。ここで用いられた方法は方法的にも新しいものであり、多くの応用をもつと思われる。 (2)重くてしなやかな弦を吊り下げた場合の弦の振動を研究し以下の結果を得た。この弦の振動方程式は主要部が退化する二階の双曲型偏微分方程式になる。時間について準周期的な線形外力が弦に作用する場合、外力の準周期とBessel関数の零点が弱いDiophantine条件を満たすならば、全ての解は時間について概周期的である(論文投稿中)。従来この方程式はKoshlyakov, Gliner, Smirnov, Komenevなどによって研究されてきたが、Bessel-Fourier展開を用いて得られた解は数学的に厳密な解ではなかった。我々の結果の優れた点はこの方程式に適合した関数空間を設定し、この空間の中で弦の方程式の偏微分作用素に関する固有値問題の解を求め、この解を用いてスペクトル理論を構成しこの問題を解いたことにある。
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