研究課題
今年度は、本研究の最終年度であり、これまでの研究から様々な条件における「2階非線形差分方程式の大域的解」に関してのまとめを行うと同時に、「数理経済モデルと現象との対比」を"経済活動としての現象"と"数学モデルの解の振る舞い"という観点からの比較を行った。まず、2階非線形差分方程式に関しては、これまで2階線形差分方程式のように一般解を得る事が非常に困難なため、離散的な解を得るか、もしくは解の表示を得ることはせずに、その解の振る舞いに関して状況を調べるにとどまる研究がほとんどであった。均衡点へ収束する解析解の存在が知られていても、一般的なその解を解析解として表示することができないのであった。1階差分方程式においてでも、非線形差分方程式においては、解析解の表示が非常に困難なのである。しかしながら、今年度の研究において、2つの固有値の条件により、大域的な解の状況が分類され、その中の収束する解に制限すれば、次のような手順でその表示を得ることが可能となった。まずは、ある関数方程式を用いて階数低下を行い、さらに複素解析の手法を駆使するし一般解を得るのである。特に、2つの固有値が共に1となる場合に関しても解を得ることが可能になったことは、本研究の中でももっとも大きな成果といえる。本研究により、ほとんどの場合の「2階非線形差分方程式」の「収束解」の表示が得られたが、まだ固有値条件の一部の場合に関しては、今後の継続課題として続けていくことになる。非線形経済モデルに関しての研究としてはクールノーの非線形寡占モデルを取り上げると共に、Goodwinの特異摂動問題を取り上げた。"数理経済モデル"では「初期値」および「解の軌道」という概念がなく、「均衡点」のみが議論の対象という、"数学モデル"との隔たりを埋めるべく議論を重ね、国内・ドイツ・ギリシャにおける国際会議にて研究成果を発表することができた。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (10件)
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