研究概要 |
1.等エントロピー気体力学方程式の弱解の減衰: 波面追跡法により弱解を構成する際の近似解にあらわれる衝撃波に対して,その世代番号と振幅が定義される.本研究においては,任意の時刻tにおける振幅の和を考察し,その振幅を世代番号で分類することにより,衝撃波の衝突により生成される相互作用波の全量を評価することができた.この評価により,構成した弱解が減衰し定数状態に漸近的に近づくことが証明された. 2.臍点を持つ2x2保存則系の粘性衝撃波解の存在: 臍点を持つ2次の流速の保存則系においては,Hugoniot曲線上にLax衝撃波(古典的衝撃波)のみならず,過圧縮衝撃波,不足圧縮衝撃波のような非古典的衝撃波が存在することが知られている.本研究では,Schaeffer-Shearerの分類によるCase1と2において,大きな振幅を持つ古典・非古典衝撃波について,粘性衝撃波が存在するか否かを考察した.基点がmedian(ある種の退化直線)上に無い場合は,ほとんどすべての古典波と過圧縮波は粘性衝撃波を持つことを示した.また,基点がmedian上にある場合は,不足圧縮波が粘性衝撃波を持つことがある.このときは,Lax衝撃波であっても粘性衝撃波を持たないことがあり,本研究では持たないための条件を導くことに成功した.両方の結果ともに,臍点を持つ2次の流速ならば,Hugoniot曲線が有理曲線であることを本質的に用いた.とくに前者においては,等高線が非有界である場合にMorseの補題を拡張して用いた.この方法は,一般的にポテンシャルによる勾配流の大域的な接続問題に有効であろうと考えられる. 3.ラバル・ノズル流の定常解: ラバル・ノズルの実験においては,片側の貯気槽の圧力を一定にし,もう一方の側の圧力を下げていくと,亞音速流が喉部で音速に達し閉塞(choking)することが知られている.また,それ以上に圧力を下げると超音速流が発生し,その超音速流と亞音速流が(古典的)衝撃波で結ばれることが知られている.等エントロピー理想気体ならば,上記の現象を理論的に確かめることができる.本研究では,必ずしも理想気体でない場合にも,適当な条件の下で上記のことが起こることを示した.さらに,あらわれるHugoniot曲線と等音速曲線の幾何学的な性質と漸近的な性質を明らかにすることができた.
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