研究概要 |
古典力学の研究における基本問題の一つに「具体的に与えられたハミルトン系が可積分か否かを判定すること」がある.ハミルトン系が可積分であるとは,運動方程式の一般解を解析的に求めることができることを意味する.例えば万有引力で相互作用する2質点の運動を記述する2体問題は可積分であるが3体問題は可積分でない.本研究はそのような可積分性のより強力な判定条件を求め,可積分なハミルトン系のリストを得ることを目的とする. この課題において本年度はマチエフスキー氏(ポーランド)とその共同研究者によるブレイクスルーが著しい.その結果,可積分となるパラメータ値はモラレスとラミスの結果による無限の点列から有限の点列へと制限できることが分かった。さらにポテンシャルに自然な条件(対称性,あるいは実数条件)を課すことによってさらに大きく可能性を減らすことが可能となってきた.このことは可積分系のリスト(2つの無限系列と若干の例外型のみの存在を予想)を作成できる可能性が現実的になってきたことを意味する. 上記の結果は一部,本研究費によって今年度国立天文台に1ヶ月滞在することが可能となった,海外研究協力者のマチエフスキー氏との共同研究の成果である.これらはまとまり次第,原著論文として投稿する予定である.また現時点での最新の結果は岩波講座・物理の世界「力学の解ける問題と解けない問題」(1995年出版,岩波書店)にその概要を記した. 数値解法に関する研究成果としては,カロゲロ模型の超可積分性を保つ離散化(数値解法アルゴリズム)を初めて見いだした.ここで超可積分性とは自由度Nのハミルトン系が(2N-1)個の保存量を持ち,その結果として全ての有界な軌道が周期的になることを意味している.
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