研究概要 |
古典力学の研究における基本問題の一つに「具体的に与えられたハミルトン系が可積分か否かを判定すること」がある.ハミルトン系が可積分であるとは,運動方程式の一般解を解析的に求めることができることを意味する.例えば万有引力で相互作用する2質点の運動を記述する2体問題は可積分であるが3体問題は可積分でない.自由度nのハミルトン系の場合,非自明で最も簡単な場合が自由度2の場合であるが,この場合に限っても現在のところ,あるアルゴリズムによって可積分性を判定するという基本問題は解決されていない.本研究はそのような可積分性のより強力な判定条件を求め,可積分なハミルトン系のリストを得ることを目的とした.当該期間に得られた主な結果は次の通り. (1)新たな可積分な同次式ポテンシャルの組織的な探索を実行し,速度$p_1,p_2$について3次および4次の第一積分を持つ全ての多項式ポテンシャルを列挙することに成功した.. (2)カロゲロ模型は自由度Nに対して(2N-1)個の保存量を持つ超可積分系である.この系の超可積分性を保つ離散化(数値解法アルゴリズム)を初めて見いだした. 最終年度においてマチエフスキー氏(ポーランド)とその共同研究者によるブレイクスルーが著しい.その結果,可積分となるパラメータ値はモラレスとラミスの結果による無限の点列から有限の点列へと制限できることが分かった.さらにポテンシャルに自然な条件(対称性,あるいは実数条件)を課すことによってさらに大きく可能性を減らすことが可能となる.これは可積分系のリスト(2つの無限系列と若干の例外型のみの存在を予想)を作成できる可能性が現実的になってきたことを意味する
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