銀河がいつどのようにして誕生し、どう進化して現在に至ったのかは、現代天文学の最重要問題の一つである。この問題に取り組む上で不可欠なのが、誕生間もない頃の銀河、すなわち超遠方の銀河を直接観察することである。光の速さは有限なので、遠方の銀河を観測することで、それだけ過去の銀河を調べることができる。本研究の目的は、すばる望遠鏡を用いて、赤方偏移が5程度以上の銀河を多数検出し、それを用いて超遠方の銀河の統計的性質(光度関数や空間分布など)を調べることである。z=5での宇宙の年齢は約12億歳であり、これは、現在の宇宙年齢(約140億歳)の10分の1以下に当たる。 本研究では、すばる望遠鏡の主焦点広視野カメラを用いて「すばるディープフィールド」という天域を可視の多数の波長帯で長時間観測し、z=4から6にある銀河を約2000個検出した。その結果、明るい銀河の数密度がz=6から4までに約10倍に増えていることを見出した。これは、重い銀河の形成時期を突き止めたことを意味する。こうした明るい銀河は、現在の宇宙では銀河集団(銀河群や銀河団)の中の銀河に進化していると予想される。我々はまた、z=5の宇宙で、銀河が大構造を作って分布していることも発見した。これは、現在の宇宙に普遍的に見られる大構造の起源と進化を解明する上で重要な発見である。これらの研究に加えて、我々は、可視と近赤外線の測光データを用いて、赤方偏移が1から2にある赤い銀河の測光適性質も調べ、数密度や色の進化を考察した。
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