本研究では、AGB変光星の探査及びその変光、質量放出現象を解明するため、南アフリカ天文台に設置されたIRSF望遠鏡+近赤外カメラSIRIUSを用い、大小マゼラン雲の中心領域と球状星団及び我々の銀河系の球状星団に対し長期にわたり反復観測を行った。 AGB変光星の周期・光度関係には幾つかの系列が存在することが知られていたが、我々の均質かつ膨大なデータから得られた周期・光度(K等級)関係から、それらの系列がさらに細分化されることを明らかにした。これら系列がより鮮明になったことで、ミラ型と呼ばれる長周期脈動変光星には、基底振動モードにある星と第1陪振動モードにある星の2種が存在すること、周期が短く振幅の小さい系列は、ミラ型の陪振動モードの星ではないこと、また、暗い系列の星はAGB星ではなくRGBにある変光星であることを発見した。これら変光星の系列は大マゼラン雲のみで知られていたが、小マゼラン雲の変光星でも同様な並列が存在すること、さらに周期・光度関係が金属量に依存し、金属量の少ない小マゼラン雲ではミラ型変光星の光度が明るくなることを発見した。さらに、これら変光星の周期と近赤外の色(J-K)の関係において、上記ミラ型変光星は他のタイプの変光星とは全く異なる振る舞いを示し、また、振動モードによっても異なる関係を示すことが判った。このことはミラ型変光星の周期と色が判れば振動モードが明らかにでき、これを用いて逆に距離を決定できることを示している。 またマゼラン雲球状星団の観測からAGB段階の星は進化とともに光度を増すが、AGB末期の最高到達光度付近の星は全て変光現象を示すこと、以後質量放出量が増大して星は赤くなるが、その変光の振幅が進化とともに増大すること明らかにした。このことから、ミラ型変光星はAGB期最末期の変光星であるということが判った。
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