計画通り、多機能の可視光装置である京都三次元分光器第2号機(3DII)の面分光モードのための低倍率拡大系の設計・製作を行なった。すばる望遠鏡での標準的な観測条件下で比較的粗い空間サンプリングを選択可能にするためである。設計段階では、まず、データの質を下げずに多瞳像の大きさをどこまで大きくできるかを検討した。シミュレーションの結果、多瞳に対して分散をかけたときに得られるスペクトルの抽出の仕方をソフトウェアで工夫すれば、多瞳が3ピクセル半程度のサイズでもスペクトル間のクロストークの悪化が押えられることがわかった。その結果、現在の34倍よりかなり拡大率を押えた20倍拡大系を目指して光学設計を行なうことに決まった。オプタリクスとコードVという2つの設計ソフトを駆使し、当初の目標よりもさらに少ないレンズ枚数で充分な性能をあげることのできる設計に成功した。単純な天体結像性能だけでなく、拡大系直後やマイクロレンズ直後に生成される瞳像のシャープさも確保した。3DII面分光が、完全に幾何光学的に構成された多瞳分光を採用しているという特徴を活かすためだ。レンズ枚数を減らしたことなどにより、透過率の向上も達成できる。なお、光学設計では、原器合わせ・ゴースト解析・公差解析も行ない、充分現実的な設計であることも確認した。これをもとに製作した拡大系を現在性能評価している段階である。来年度はこれをすばるに取り付け、実際の天体の観測を成功させたい。なお、3DII面分光はライナー研究だけでなく他の研究においても強力な武器となるので、このことをアピールして共同研究的な活動を広めていきつつある。
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