すばる望遠鏡に京都三次元分光器第2号機(3DII)を搭載して得られたライナー天体の面分光データの一部を論文にまとめた。銀河中心に存在すると考えられている超巨大ブラックホールのごく付近からふき出す銀河風とよばれるガスをその運動とともに鮮明に描き出すことに成功したのである。銀河風には、このような超巨大ブラックホールに起因するものと、爆発的な星形成によるものとが存在するが、より起源になぞの多いとされる前者をとらえたものだ。銀河風の内部構造までもとらえており、その起源に迫るものとなっている。この成果と3DIIについての紹介を行うために、英国ダーラムで行われた国際ワークショップIntegral Field Spectroscopy : techniques and data production(面分光:技術とデータ解析)に科学組織委員の一人として参加した。このための旅費を使用した。このワークショップは、大望遠鏡で実績をあげた面分光装置関連研究者を世界中から網羅して集め、次の30-100メートル望遠鏡時代への基礎作りをすることを目的としたものである。世界的にも、3DIIが大望遠鏡で活躍している面分光装置として認識されていることがわかる。3DIIでの経験も充分にアピールできた。独国ガーヒングで行われた、天文学的成果にウエイトをおいた国際研究会でも、ライナー天体観測の成果を発表した。なお、この装置をより効率的に使用するために、反射率のより高い鏡を購入した。グループ外のさまざまな分野の研究者との共同研究もさらに広がりをみせている。
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