今から百数十億年前に起きた銀河系の形成と初期進化の研究においてひとつの有力な方法は、銀河系形成の時期に出来て現在まで生き延びている年齢の古い恒星の化学組成を研究し、その星が出来た時代までに起きた物質進化の歴史を探ることである。本研究は、観測対象をわれわれの銀河系の外に広げ、独立した進化を遂げてきたと考えられる小規模なわい小銀河の恒星の研究を行うことを考えたものである。この研究の対象として、北天で観測可能な数個のわい小銀河の中で最も明るい赤色巨星を選び、すばる望遠鏡の公募観測に2002年度から申し込みを行った。幸い5年間で4回の割り当てを得ることが出来た。観測対象が暗いので条件は厳しかったが2007年1月の観測をもって一応の目標を達成できた。この間、2004年にはおおぐま座わい小銀河の3個の赤色巨星の解析結果の論文が出版され、その後ほかの天体の解析が進行中である。日本の研究チームと南半球(チリ)に拠点を持つヨーロッパの研究グループの共同研究も進んでおり、すでにいくつかの共同論文がでている。これらの研究は今後数年かけて最終的な結果がまとまると予想している。
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