超新星爆発やブラックホール形成の理解には、様々な温度・密度での核物質の性質を明らかにする必要がある。本研究では、重イオン反応・ハイパー核反応から引き出した情報を取り入れて超新星物質の状態方程式・核種分布テーブルを構築し、超新星爆発の研究を進めることを目的として計画された。 高エネルギー重イオン反応では、ハドロン衝突と平均場効果を取り入れた輸送模型(JAM-RQMD/S)を開発し、運動量依存平均場を導入することにより、広い入射エネルギー(核子当たり1〜160GeV)で集団運動流(フロー)を説明できることを示した。また、RHICエネルギーでは流体模型とハドロン輸送模型の比較を行うとともに、新たなハドロン化模型を提案している。 ハイパー核物理においては、ハイペロンが束縛・連続エネルギー領域において生成される反応を分析し、実験データと無矛盾なハイペロン・ポテンシャルを引き出した。∧以外のハイペロンは、従来の予想よりもポテンシャルが斥力的であることが確かめられつつある。また、強結合格子QCDに基づくカイラル対称相対論的平均場模型(Chiral RMF)を提案し、通常核とともにハイパー核の性質が説明できることを示した。 低密度超新星物質においては、NSE(統計的原子核平衡模型)と相対論的平均場理論から得られる状態方程式の比較を行った。これらを連続的につなげるためにはパスタ原子核等が重要と考えられる。 これらの情報に基づいてハイペロンを取り入れた超新星物質状態方程式テーブルを作成・公開した。より斥力的な新たなハイペロン・ポテンシャルを用いると、中性子星ではハイペロンの発現密度は高くなり、内部での粒子組成は大きく異なる。超新星爆発では温度・密度が穏やかでありハイペロンの影響は大きくないが、ブラックホール形成時には高温・高密度状態を経由するため、ハイペロン発現の効果が観測可能であることが示唆されている。
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