すばる望遠鏡の主焦点カメラによる遠方の銀河団領域の観測データを用いて弱い重力レンズ解析をおこなった。観測した銀河団はまわりにフィラメント上の銀河分布をもち形成途上であると考えられているが、重力レンズの解析から暗黒物質も銀河分布とよい一致を示すことを発見した。 また近傍銀河団A1689のハッブル宇宙望遠鏡の強い重力レンズの観測とすばる望遠鏡による弱い重力レンズの観測を合わせることによって銀河団中心部から銀河団周辺領域にいたる密度分布を求め、冷たい暗黒物質にもとずく構造形成理論において予言される銀河団の密度分布と比較検討した。その結果、密度分布の形はよく理論と一致するが中心部の集中度が理論から予想される値を大きく上回ることが示された。これは銀河団の形成および暗黒物質の性質に大きな制限を与える可能性がある。このような観測を多くの銀河団に対して行うためすばる望遠鏡にプロポーザルを提案した。 さらにすばる望遠鏡を用いて宇宙シアとよばれる大規模構造による背景銀河の組織的なゆがみを観測して宇宙のエネルギー密度の70%を占める暗黒エネルギーの状態方程式を決定するプロポーザルが採択された。この観測は平成17年度に行われる予定である。 またすばる望遠鏡で観測した赤方偏移が0.83という非常に遠方にある銀河団C11054のまわりにこれまで光学的な観測で銀河団が存在しないところに弱い重力レンズによる重力的な集団の信号を得た。最近、X線観測によって赤方偏移が0.7でその位置に銀河団が発見された。このことは弱い重力レンズが非常に遠方の銀河団を発見する有力な方法であることを示している点で画期的である。
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