研究概要 |
1.MEM(最大エントロピー法) テータ項をもつ2次元CP^N-1場の理論の相構造を調べるため数値シミュレーションを行うと、自由エネルギーにフラットニングと呼ばれる振る舞いが見つかる。テータ項はボルツマン因子を複素数にするので数値シミュレーションが実行できないが、トポロジカル荷電毎にセクターに分けるとテータが0のときのボルツマン因子が実数となりシミュレーションが可能となる。すなわち分配関数をトポロジカル荷電についてのフーリエ級数として扱うことができる。しかしトポロジカル荷電=0の寄与の統計誤差が原因となってテータの関数としての自由エネルギーの微分が、あるテータのところで不連続になることが起こりうる。この場合、これより大きなテータの情報は得られない。 この問題を異なる方法で調べるため最大エントロピー法を用いて分析した。種々のデフォールト模型をとると上記の直接フーリエ級数で評価された誤差の範囲内にはいるような解が許されることがわかり、フラットニングが統計誤差によるという判断を支持することが明らかになった。これはNucl.Phys.(Proc.Suppl.)140(2005),617-619に発表した。 2.ヨーロッパのAzcoitiらのグループが、テータ項の問題にアタックするためにテータを純虚数にすることによりボルツマン因子を実数化して数値計算を行うことを提案した(Phys.Rev.Letters,89(2002),141601.)。 テータを純虚数にすることが何を意味するかを明らかにするため、われわれは彼らが調べた強結合領域のみならず、彼らが調べていない弱結合領域の数値計算を実施した。結局、テータを純虚数にすることは「テータが0のトポロジカル荷電分布」についてのシミュレーションにたいする一種のフィッティング法にほかならないことがわかってきた。
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