M理論のコンパクト化とG_2多様体

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15540253
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 江口 徹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20151970)
• キーワード: geometric transition / Chern-Simonsゲージ理論 / Seiberg-Witten 解 / Nekrasovの公式 / Liouville理論 / 境界状態

研究概要

今年度、江口は超弦理論におけるgeometric transition(幾何学的転移)の力学を調べた。geometric transitionはコニフォルド特異点を持つカラビ・ヤウ多様体に対して適用されるが、コニフォルド特異点は2次元球面を膨らませる方向と3次元球面を膨らませる方向への二つの特異点除去除去の方向を持つ。3次元球面が膨らんだ変形コニフォルド上ではチャーン・サイモンズ・ゲージ理論によって理論が記述され2次元球面が膨らんだ特異点解消コニフォルド上ではタイプII超弦理論ないし重力理論によって理論が記述される。コニフォルド転移によりこの2種類の理論が双対となりゲージ・重力対応が実現される。江口はチャーン・サイモンズ・ゲージ理論を用いて理論の分配関数を厳密に求め、この結果がNekrasovによる公式と完全に一致することを示した。Nekrasovの公式は二つのパラメーターを含みこれらの値がゼロに行く極限で4次元でN=2超対称性を持つSU(2)ゲージ理論の厳密解(Seiberg-Witten解)を与えることが知られている。我々はこの二つのパラメーターをある種の非コンパクトなカラビ・ヤウ多様体の持つパラメーターと同定するとき、Nekrasovの公式が超弦理論の分配関数と完全に一致することを示した。
江口はまたN=2超対称性を持つLiouville理論を調べ、その表現の指標関数のモジュラー変換性から、理論のD-braneや境界状態を決定した。こうして求められた理論のdisc振幅は、共形場理論を用いた独立な計算と一致する。

研究成果

• [文献書誌] Tohru Eguchi, Yuji Sugawara: "Modular Bootstrap for Boundary N=2 Liouville Theory"JHEP. 0401. 025 (2004)
• [文献書誌] Tohru Eguchi, Hiroaki Kanno: "Topological Strings and Nekrasov's formulas"JHEP. 0312. 006 (2003)
• [文献書誌] Tohru Eguchi, Yuji Sugawara: "Branches of N=1 Vacua and Argyres-Douglas Points"JHEP. 0305. 063 (2003)
• [文献書誌] Tohru Eguchi, Yuji Sugawara, Satoshi Yamaguchi: "Supercoset CFT's for String Theories on Non-compact Special Holonomy Manifolds"Nucl.Phys.. B657. 3-52 (2003)
• [文献書誌] Tohru Eguchi, Kazuhiro Sakai: "Seiberg-Witten Curve for E-String Theory Revisited"Adv.Theor.Math.Phys.. 7. 421-457 (2003)