この4年間の研究の主な成果は次のようなものである。 論文2では、3次元球面上のChern-Simonsゲージ理論と非コンパクトCalabi-Yau多様体上の位相的弦理論がgeometrical transitionで移り合う事を用いて、種々の非コンパクトトーリックCalabi-Yau多様体上にコンパクト化された弦理論の分配関数を厳密に求めた。この結果はNekrasovにより提出されていたゲージ理論の分配関数と完全に一致し、位相的弦理論と4次元のN=2超対称ゲージ理論の関係を確立した。 論文3ではN=2の超対称性をもつリュービル理論に関してモジュラーブートストラップの方法を用いて理論の境界状態を決定した。この結果はT双対関係にあるSL(2;R)/U(1)理論の知られた結果と良く一致する。 論文7では、Ashoke-Douglasの公式を用いてCalabi-Yauモジュライ空間上のflux真空の分布関数を評価した。特に、モジュライ空間の特異点付近に真空の分布が集中するが、この分布はモジュライ空間の座標をzとし、z=0を特異点とすると1/(z^2 logz^2)の形をもち、z=0では発散するがその積分値は有限である。 論文8では、N=2やN=4超対称共形代数の表現論を用いて、ALE空間のように非コンパクトな空間の位相不変量を求める方法を議論した。特に、その楕円種数に関する予想を提案し、それがK3曲面を非コンパクト化して得られる結果と一致する事を示した。
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