研究概要 |
QGP中では、熱的なデバイ遮蔽効果により、クォーク--反クォーク間の引力ポテンシャルが弱められ、重いクォークからなる結合状態は存在できなくなると考えられる。しかしながら、J/Ψの結合状態が溶解する温度T_<melt>が,閉じ込め-非閉じ込め相転移の臨界温度T_cとどのような関係にあるかは、相転移点付近の非摂動効果のため解析的な研究が困難であった。我々は、格子QCD計算とベイズ統計法を組みあわせて、クェンチ近似の枠内ではT_<melt>〜1.7T_cであることを示した。 中性子星の深核部やクォーク星の内部などの高密度状態では、非閉じ込め相にある冷たいクォーク物質が存在する可能性がある。そこでは、クォーク間にグルオンを介した引力チャネルが存在するため、クォーク物質がカラー超伝導状態にあると考えられる。我々は、有限温度超伝導相転移の臨界点直下にあるカラー超伝導相を、量子色力学の対称性に基づくギンツブルグ・ランダウ理論により解析し、グルーオン場の熱揺らぎの効果で、カラー超伝導相から常伝導相への相転移次数が一次になることを見出した。 核子の正パリティ・負パリティの励起状態の情報の抽出にこの方法を適用し、基底状態のみならず励起状態のスペクトルを格子データから引き出すことが出来ることを、下記の研究発表論文14で示した。この研究では、格子上での物理的なスペクトルと、離散化に由来する非物理的なスペクトルとを峻別する手段をも最大エントロピー法が与えてくれることが明らかになった。
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