研究課題/領域番号 |
15540256
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
風間 洋一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60144317)
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研究分担者 |
橋本 幸士 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80345074)
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キーワード | 超弦理論 / 超共形性 / pure spinor形式 / ブレーン / 低エネルギー有効理論 / ブレーンの組み替え |
研究概要 |
風間は、露わに超共形性を実現する超弦理論の新しい世界面形式として注目されている「pure spinor(PS)形式」において、pure spinorを定義する非線形な拘束条件が幾つかの重要な困難を引き起こすことを指摘し、この非線形条件を伴わないより広い場の空間を用いる「拡張された(Extended)PS形式」(EPS形式)を提唱した。そして、このEPS形式の物理的状態を支配するBRST chargeのコホモロジーがPS形式のそれと一致することを示すとともに、超弦理論のmassless粒子の放出吸収を表す頂点作用素を構成した。さらに、PS形式では構成できなかったいわゆるB-ghost場を構成することにより共形不変性との関係を初めて明らかにした。また、よく知られたRamond-Neveu-Schwarz形式とEPS形式の関係を、両者を結ぶ量子論的な相似変換を具体的に構成することにより明らかにした。その後の研究により、物理的内容が最も明らかであるGreen-Schwarz形式への量子写像の構築もほぼ完成しており、PSおよびEPS形式の背後にある基本的作用を探るための重要な基礎を築くことができたと言える。 橋本は、まず超弦理論における交差するブレーンがどのように組み替わるかを、低エネルギー有効理論の立場から明らかにした。これは、ブレーンが局所的に消滅したことに相当しており、ブレーンの消滅に関するSenの予想を特定の場合に証明したことになる。ブレーンの組み替えは、ブレーンを弦理論の基本的物体とする立場では非常に基本的な相互作用である。また、ブレーンを用いた現象論においても、この組み替え機構は、インフレーション宇宙モデルや標準模型のヒッグス機構などを実現するための中核をなす。これらの意味で、ブレーンの相互作用の重要な部分を解明したと考える。さらに、このようなブレーンの動力学は、ブレーン間をつなぐ弦の力学に大きく依っており、それは非可換な行列で体現されているが、この非可換性が高次元のブレーンの形にどのように寄与しているかを研究した。その結果、行列の情報が、ブレーンから離れた場所に於いても高次元空間の電荷分布の情報を与えていることを具体的に明らかにすることに成功した。
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