量子計算への幾何学的アプローチ 細谷は共同研究者のCarlini(東工大COE研究員)古池(慶応理工・助手)奥平(東工大修士2年)とともに、量子情報空間における計量に関する研究を行った。それによれば、CP写像に対する単調減少性を課すと任意関数一個を含むPetzの計量になるが、さらに測定過程による計測可能性まで要求するとBure計量に限られる。これは純粋状態の場合に標準的なFubini-Study計量に一致する。この計量の有用性は最速であることが別途示されているGroverのアルゴリズムがFubini-Study計量に対する測地線をたどることからも示唆される。しかし、量子計算に有用な計量がどの範囲なのかは、さらに物理時間に関する最適化を論じなければならない。量子空間における距離と物理時間の間の関係は、エネルギーと時間の不確定性関係に類似している(Anandan-Aharonov)が、物理時間の最適化は、いわば外力付きの測地線の方程式に成るであろうと予測して研究を進めている。途中の段階でいくつか興味深い結果が得られたので論文として発表する準備をしている。量子情報理論細谷は共同研究者のCarlini(東工大COE研究員)と岡野((東工大修士2年)とともに、エンタングルメントと干渉性が相補的な関係にあることを、純粋状態については一般的に、混合状態については2キュービットについて示した。この結果は2004年のEQISで発表。 情報理論の宇宙論への応用 細谷は共同研究者のBuchertと森田(沖縄高専)とともに、物質優勢宇宙においてその非一様性の指標として相対エントロピーを提案した。そして、それは時間とともに減少するであろうと予測し1次の摂動論と球対称宇宙の場合に示した。結果はPhys.Rev.Lettersに掲載され、GRGで口頭発表された。今はその詳細を論文に纏めているところである。 量子情報理論の量子宇宙論への応用 細谷はこの長射程のテーマの準備をすべく、時空と量子情報理論との接点について数理科学にレビュー的な記事を5編掲載しいろいろな分野の文献の中に散見する文献を収集して、日本の学会にこの未開拓の分野について啓蒙活動を行った。概要については、JGRGとFrontier in Quantum Physics(ともに京都)の招待講演で発表。
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