[1] 細谷と分担者古池は、共同研究者Carlini(東工大COE研究員)と奥平(D1)とともに、最適の量子状態発展に関して大きな成果を上げることができ、Physical Review Letterに掲載された。与えられた初期状態から欲しい量子状態をシュレーディンガー方程式に従って最短時間で実現するハミルトニアンを求める。ここに、ハミルトニアンは一般に時間に依存してもよいが、物理的あるいは技術的な制約のためにある範囲に限定されているものとする。この問題の立て方は極めて一般的で、量子的な実験あるいは量子計算に適用できる。またコスト関数を選ぶことにより、幅広い量子最適問題に拡張できる。古典力学において知られている最速降下曲線を求める方法と類似の変分問題によって一般的に定式化し、基本的な一本の方程式を導いた。 [2] 細谷は、相対性理論と量子情報理論との接点について、すでに出版されている論文についてサーベイし今後の研究の方向性について述べた一連の記事を雑誌「数理科学」に掲載した。内容は量子重力において観測の意味することを明確にするためには量子情報理論が必要になるという考えを述べて、日本の研究者を触発することを目的としたものであって、それによる具体的な成果がまだあるわけではない。
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