研究概要 |
平成17年度に引き続き量子重力で用いられてきた方法を改良し、境界のある空間を作ることのできるアルゴリズムに仕立て上げ、宇宙を作るシミュレーションを行った。この類のシミュレーションには前例がなく、時間の定義、空間の定義、不安定系の量子化など、理論物理学では解決されていない問題を多く含むため、解析的な理論が存在する2次元量子重力との比較を重点的に行った。状態数や状態相に関しては行列模型と臨界点,臨界指数とも3桁の正しさで再現することをしました。2点相関関数を求めるために、表面で枝分かれするような妥当でないグラフを除く新しいシミュレーションアルゴリズムを開発した。またオペレータを正しく定義することにより、境界のあるリュービル理論が予測する指数を持つ2点関数が求められた。これらの計算から、私たちの与えた宇宙生成の規則は正しい2次元宇宙を作るという確信を得た。この研究に基づき、理論が存在しない、場の理論の不安領域での、2次元シミュレーションと、その高次元への拡張を行った。2次元では、物質効果によりインフレーションからビッグバンに移り変わる可能性があることを見出した。また2点関数の時間発展は、大方の研究者が期待したように、インフレーション前の揺らぎパターンがインフレーション中も大体保存されていることを数値的に確かめた。4次元のシミュレーションによりスカラー曲率の2点相関関数とWMAPの2点温度相関関数を比較し、現象論的なLambdaCDM模型の結果より良い値を得た。これらの結果を論文誌に掲載するべく努力した。宇宙を作ること、時間を定義すること、宇宙のトポロジーを決めることなど、今まで理論物理学が問題としてこなかった点が多く、レフェリーとのやり取りに、多くの時間を割いたが、やっと掲載可の知らせを得た。
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