本年度は、主として、核物質中でのハイペロンの振る舞いを理論的に研究した。本課題の目的は、中性子星内部などに存在する高密度バリオン物質の状態方程式をバリオン間相互作用にもとづいて理解することである。本年においては、そのための土台として、ハイパー核の構造を記述するバリオン間相互作用、および、高密度核物質中でのハイペロン混合について理論的に研究した。その結果、量子力学的なハイペロン混合が重要な役割を演じていることが明らかになった。 加えて、巨視的な(古典的な)レベルでハイペロンが混合するような、化学平衡にある高密度バリオン物質でのハイペロンの混合を決定する数値的方法について検討し、その計算プログラムを開発した。その結果は国際会議(HYP2003:VIII International Conference on Hypernuclear and Strange Particle Physics)で口頭発表した(近くその報告書が出版される)。 また、本課題の特徴であるバリオン間の3体力について理論的に検討した。バリオン間の2体力は通常、OBEP(ONE-BOSON-EXCHANGE POTENTIAL)にもとづいて構成されるが、その理論と整合性のある統一的な3体力の理論を検討し、その予備的な結果についても、上の口頭発表のなかで報告した。
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