研究成果は概ね以下の3点にまとめることができる。[A]バリオン間相互作用の研究とそのモデルの構築を行った。最近得られたダブルハイパー核の精度のよいデータによって、バリオン間相互作用の研究は大きく進展した。ダブルハイパー核を再現するS=-2(ΛΛ-ΞΝ-ΣΣ)相互作用の検討と8重項バリオン間相互作用のモデルの構築を行った。[B]核子のみからなる通常核物質に対するG行列計算のプログラムを8重項バリオンからなるバリオン物質に対するプログラムに拡張した。それは、最大12チャンネルの多チャンネルのベーテ・ゴールドストン方程式を解くものである。さらに、ベータ安定条件および電気的中性条件も同時に考慮する「平衡化されたG行列計算コード」を開発した。このコードによって、中性子星の内部領域などの巨視的な高密度バリオン物質の状態方程式を精度よく計算できるようになった。[C]現実的なバリオン間相互作用に基づいて、高密度バリオン物質の状態方程式を計算した。その結果、ハイペロン混合の効果によって、現実的なバリオン間2体力のみでは状態方程式がソフトになりすぎることを明らかにした。加えて、バリオン間3体力の効果を検討した。その結果、Two-pion-exchange(ππ)機構による長距離レンジの3体力は全体として引力効果をもたらし状態方程式は改善しないこと、現象論的な短距離3体力の導入によって状態方程式はスティッフになり、TOV方程式を解くことによって中性子星の質量・半径を概ね説明可能であることを明らかにした。
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