研究概要 |
本年度の研究内容および成果は次の通りである. 1.高次元ブラックホールの摂動的一意性:高次元の静的ブラックホールに対する定常的摂動解の振る舞いを詳しく調べることにより,漸近的de Sitter4次元正則ブラックホール解,任意次元の漸近的平坦および漸近的反de Sitter正則ブラックホール解が,静的極限の近傍で球対称解およびそれに回転を加えた解に限られること(摂動的一意性定理)を示した.この成果は,Prog.Theor.Phys.誌に論文として発表した. 2.ブラックブレイン解の摂動:ブラックブレイン解の摂動方程式の構造を調べ,特に,Sモードに対する摂動方程式がSchroedinger型の方程式に帰着できることを示した.これは,Gregory-Lafflameにより最初に行われたこのモードの解析をより見通しよく行うことを可能にする.現在,磁気的な電荷を帯びたブラックブレイン解に対して同様の解析を行っている. 3.高次元回転ブラックホール解の摂動安定性:特殊Myers-Perry解の摂動方程式の構造を調べ,特に,テンソル型摂動に対する方程式が変数分離可能であることを示し,それを用いてテンソル型摂動に対する安定性を示した.現在,ベクトル型およびスカラ型に対して同様の解析を行っている. 4.高次元超重力理論におけるコンパクト化の安定性:10次元IIB型超重力理論のコニフォールド型コンパクト化に対してそのモジュライパラメーターの安定性を調べ,ラディオンセクターにおいて超対称性を破れを伴う不安定性があることを示した.この成果については現在,論文を作成中である.
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