研究概要 |
本研究は、魔法数が消失しているとされるN=8,N=20近傍の中性子過剰核^<11>Be,^<30>Mg,^<31>Mg,^<32>Mgの励起状態の構造を調べ、魔法数消失のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 強い相互作用で結合した多体系である原子核は厳密な理論的扱いが困難であるが、核子の量子力学的性質から核子は原子核全体が作り出す平均一体場中で運動しているとみなす近似により殻模型などの理論が大きな成功を収めた。しかし、近年安定領域から大きく離れた不安定核が生成可能となり、この領域ではそれまでの理論では予想できない諸性質が報告されてきた。以来この領域でも適応可能な、原子核理論の実験的検証が精力的に行われてきている。特に核の殻構造を特徴づける魔法数の消失は、不安定領域の核の核での平均一体場の変化に敏感である。我々は魔法数が消失しているとされるN=8,N=20領域の核の励起状態の構造を詳細に調べることで、励起状態における魔法数消失の影響を検出する。核構造の詳細な議論にはスピンパリティは不可欠な物理量である。我々の方法の特徴は、スピン偏極した不安定核を用い、そのβ崩壊後放出される中性子、γ線のエネルギーを測定し、β線の放出非対称度との相関から、娘核の励起状態のエネルギー、遷移確率に加え、スピンパリティを決定できることにある。また、少ない収量で確実にスピンが決定できる唯一の方法である。 この測定手法の実証とN=8系への適用を兼ねて^<11>Beの励起状態の構造を測定した。実験はカナダTRIUMF研究所で光ポンピング法により核スピン偏極した^<11>Liを生成し、スピン偏極に応じて非対称に放出されるβ線と、同時放出される中性子およびγ線との相関から、^<11>Beのこれまで未知であったいくつかの励起状態についてスピン、パリティ、崩壊強度および崩壊経路を決定した。
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