本研究では、シーソー機構で導出されるニュートリノの質量行列の構造を、低エネルギーと高エネルギーでの様々な現象を使って研究した。低エネルギー現象としては、ニュートリノ振動、原子核の二重ベータ崩壊などのレプトン数を破る過程を、また高エネルギー現象としては、レプトジェネシスや超対称性理論で導かれるレプトンの香りを変える有効相互作用を研究した。このようなエネルギースケールの異なる現象を研究するために、くり込み群方程式を解析的解き、その解を用いて議論した。 特に、(1)高いエネルギーでニュートリノの特別な混合(Bi-Maximal混合など)を仮定した場合における、上記の現象の解析し、実験を再現する条件を求めた、またCPを破る位相について調べた、(2)CPを破るマヨラナ位相がレプトンの香りを破る過程へ大きな影響を及ぼすことを解析的に示した、(3)原子核の二重ベータ崩壊やμ補角などでの、レプトン数を破る過程の総合的解析し、現実的には原子核の二重ベータ崩壊以外は実験から情報を得ることは困難であることを示した、(4)電子・陽電子衝突で発生したヒッグス粒子の崩壊において、レプトンの香りを破る過程の起こる可能性を解析した、(5)暗黒エネルギーの起源について、宇宙の初期のクォークのスープがハドロン化する際の、孤立したクォークが起源であるとの説を提唱した。
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