1.一様磁場中におけるn次元トーラス上の量子力学 これまでの研究で、磁場は非常に重要な役割を果たすことが分かってきた。そこで、n次元トーラスに一様磁場がかけられている量子力学系を考え、その厳密解、及び、物理的諸性質を明らかにした。2次元系での解析はこれまでになされていたが、任意の斜方n次元トーラス上の解析はなされていなかった。高次元への拡張は自明ではなく、磁場の対角化と絡み数学的に非常に興味深い系になっていることがわかった。古典的にはトーラスの持つ並進対称性は破れていないにもかかわらず、量子論的には連続的な並進対称性が離散的な並進対称性に破れることが明らかになった。このことは、これまでの研究では明確な形で示されていなかった点である。また、非可換幾何との対応も具体的に示され、代数的な表現論による解析もなされた。この量子力学系を場の理論へ拡張し、フェルミオン、及び、ゲージ場をカップルさせた解析が次の課題である。 2.特異点を持つ1次元量子力学系における超対称性 特異点を持つ量子力学系は最近の研究により、非常に物理的に豊富な内容を持っていることが次第にわかってきた。特異点の存在は、必然的に系の並進対称性を破る。我々は円周に特異点を等間隔に配置して、その特異点の種類をうまく選ぶことによって系に超対称性が現れることを示した。特異点の数や種類をうまく選べば、任意の個数の超電荷を持つ理論を構成することが出来ることを具体的に示した。この超対称性は、量子力学レベルであるので、いわゆる場の理論的な超対称性とは異なるが、余剰次元をもつ高次元場の理論へ応用することにより、低エネルギー有効理論に現れる粒子が質量を持たないことを保証する機構として使えるのではないかと期待している。
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