研究概要 |
本研究は,アメリカ合衆国シカゴ郊外にあるフェルミ国立加速器研究所(FNAL)にあるテバトロン加速器を用いた陽子・反陽子衝突実験(CDF実験)において,トップ・クォークにおけるCPの破れを研究するものである。標準模型を超える物理の探索を行ない,宇宙でのバリオジェネシスに知見をもたらすことを目指す。 今年度は研究初年度であるので、トップにおけるCP非保存の観測のための理論的な基礎研究と、実験データ解析のための準備を行なった。ハドロン・コライダーにおいて,どのようなCP-odd観測量がCPを破るChromo-EDM(d_t^g)結合に感度があるのかを研究した。セミレプトニック・モードでのトップ・クォーク対生成事象の運動学的フィットによる事象の完全な再構築法を検討した。Wボソンがレプトンに崩壊して放出されるニュートリノの運動量は,横方向の欠損運動量から評価する。またWボソンとトップ・クォークの質量の束縛条件を用いて事象をフィットする。これによりトップの生成および崩壊から,総合的にCPの破れの情報を引き出すことが可能である。レプトニック・モードにおいては,Schmidt-Peskin法による2つのレプトンの横方向エネルギー非対称性を使ったCPの破れの測定についてまず検討した。 データ解析については、既存のRAIDディスクシステムにCDF実験の解析ソフトを導入し、モンテカルロによるシミュレーションや実際のデータの解析が行えるようにした。
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