研究概要 |
ニュートリノの質量の起源説は,大別して,「シーソー質量説」と「輻射質量説」とがある.シーソー質量説は,大統一理論の枠組みに組み込むことが可能であるが,輻射質量説は超対称性大統一理論には組み込むことは不可能であると言われてきた.それは,そのようなモデルを構築すると必ず陽子崩壊が起きてしまい,これは観測事実に反するからである.このことが,原理的に本当に不可能なのかを明らかにするために,佐藤とこの問題に取り組んできた. その結果,それは原理的に不可能な問題ではなく,実際に,超対称性大統一理論の枠内で,陽子崩壊を抑えたままでニュートリノ輻射質量を与えることが可能であるということを,佐藤と共著の研究で,初めて実際に例証することができた[アメリカ物理学会誌Phys. Rev.].このモデルでは,通常のSU(5)5Bar+10の物質場と5Bar+5のヒグス場に加えて,更なる別の5Bar+5のヒグス場を仮定する.しかし,このモデルでは,実際に観測されている太陽および大気ニュートリノからのニュートリノ質量差および混合の数値関係すべてを統一的に与えることはできなかった. これを受けて,小出は,Phys. Lett.誌に,更に,別のアイディアのモデルを発表した.これだと,観測されている3つのニュートリノの質量と混合の関係を正しく与えてくれる可能性を持つ.このモデルでは,通常のSU(5)5Bar+10の物質場と5Bar+5のヒグス場に加えて,更なる別の5Bar+5の物質場(ヒグス場ではなく)を仮定する.陽子崩壊やFCNC問題も回避できる.ニュートリノの質量と混合の統一的記述も可能である.しかし,ニュートリノだけでなく,クォークと荷電レプトンの質量と混合の問題を統一的に記述することについては,なお今後の研究を待たねばならない.
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