研究概要 |
年度の前半では実験装置の発注と製作をおこなった.シンチレーション光の受光素子であるアバランシェ・フォトダイオードはS88664-10k,マルチアノード光電子増倍管(以後,光電子増倍管)はH6568-10,いずれも浜松ホトニクス社製である.またシンチレーターはSCSN-81,ウェーブシフティング・ファイバー(以後,ファイバー)はY-11,いずれもクラレ社製である.本研究の目的は磁場に強いマルチアノード光電子増倍管とフォトダイオード,シンチレーターとを組み合わせて粒子の通過位置を2次元座標で決定しようとするものである。実験概要はシンチレーターに直線又は円形の溝を作り、そこにファイバーを配置し、波長変換を行い、それを数チャンネル分まとめて、光電子増倍管で読み出し、そのパルスの時間差で粒子の通過位置を測定し,位置分解能の最適値を求めるのが目的である。まず大きさ100x100x10(mm)のシンチレーターにファイバーを組み込むための対角と円形の溝をダイオード用と光電子増倍管用に4種類製作した. 年度後半においてはファイバーの性能評価の基礎データを取るため3種類のファイバー湾曲実験を行った.(a)輪による光損失,(半径r=2.8,3.2,4.0,4.9,6.25mmの5種類)(b)輪の位置による光損失,(半径を4.0mmに固定して発光ダイオードから5cm,中央,フォトダイオードから5cmの3点)(c)多重輪による光損失,(r=2.8mmで5点,r=4.0mmで3点,r=6.25mmで3点)の測定を行った.(a)において,光の損失は半径3.2mm以上では約3%一定となった.また(b)において,発光ダイオード近辺では損失5%であったが他の2点では3.5%となった.さらに(c)において,半径4.0,6.25mmでは巻き数に関係なく損失3%一定であった.しかし,半径2.8mmにおいては損失が巻き数に伴い7%から30%と大きいことが分かった.この得られた結果からファイバーの最適湾曲半径が求められた.さらにシンチレーターの溝の加工を行い,ダイオードと光電子増倍管を用いてシンチレーション光の二次元位置座標読み出しを行い,各読み出しにおける位置分解能の知見を得たいと考えている.
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