研究概要 |
超弦理論のダイナミックスや量子的効果を理解するには摂動論の振る舞いを明らかにすることが必要と言えよう.しかし,今まで1 loopより高次項の具体的な計算はほとんど行われてこなかった.また,時空間の超対称性が無い場合にも宇宙項が摂動論全次にわたってゼロであるケースがある可能性がある.低エネルギーでは超対称性はあらわではないが宇宙項は小さいのでこのような可能性は弦理論にとって重要である. Eric D'Hoker, D.H.Phongとともにオービフォルド空間にコンパクト化された超弦理論の2 loop次の宇宙項を計算した.超対称性が無い場合はモジュライ空間上ゼロでは無いことを示した.この研究ではオービフォルド空間にコンパクト化された超弦理論の2 loop次の宇宙項を計算する手法を系統的に構築した.さらに因子化することにより1 loop次の結果との関係も明らかにした.関連する物理として,非対称オービフォルドの例などはあまり知られていなかったが,我々は具体例を作り,いかにして整合性のある非対称オービフォルドが得られるかを分析した.これらの成果は2つの長編論文として公開し,投稿されている. 非平衡の物理があらゆる分野で重要であるのは言うまでもない.D.Kusnezovとともに解析的な手法と数値シミュレーションを用い,温度勾配のある系のダイナミックスを調べた.熱輸送,エントロピーといった巨視的な物理量と位相空間での微視的な物理量との関係を物理的自由度の持つ次元の消失を通して具体的に明らかにした.また,有限温度の物理系の数値シミュレーションを行うにはサーモスタットの実現が重要な要素となる.Wm.Hooverらとともに様々なサーモスタットの性質を調べ,解明した.さらに非平衡状況における線形応答や局所平衡の破れをφ^4理論,FPU模型などで定量的に求め,性質を分析した.これらの結果の一部については論文として発表されている.
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