研究概要 |
超弦理論の摂動論に関してE. D'Hoker, D. P. Phongとともに非対称な場合を含めて物理的に興味のあるorbifold真空での摂動論の2ループ次の寄与を解析的に求めた.これは,時空間に超対称性が無い場合にも宇宙項がゼロになる場合があるかどうかという物理的に重要な意味合いを持つ量であった.技術的に困難な面もあり,その分野で当時は一致した見解が無かった.我々は,時空間の超対称性が無くてもゼロになるのではないか,と当時考えられていた場合についてゼロにならないことを示し,状況を明らかにすることに貢献した.また,非対称orbifoldの系統的な理解の仕方はいまだに存在しないと思われるが,非対称orbifoldの構築法について系統的に解析した. 有限温度の非平衡系の物理は多くの分野にとって重要であるが,第一原理よりの定量的な研究は多くない.私は,D, Kusnezov, H. Spohnらとともに非平衡状態における物理量のふるまいを第一原理より計算し,その物理的な意味を解析してきた.特に局所平衡の意味,その破れ,線型応答の破れなどを定量的に求めた.また,温度勾配がある場合にミクロの側面であるLyapunov係数とマクロ的な位相空間の次元の減少,そして輸送現象との関係を明らかにした. 上述の成果は査読つきの雑誌の論文として発表している.現在も研究を続けており,数編の論文を準備中である.さらに,今回の研究は将来の研究の基盤となるものであると考えている.
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