本研究では、正負パリティのバリオン単体系の励起状態と2バリオン系の性質を同時に記述できるクォーク模型を用い、そこから得られた2ハドロン間の相互作用について調べた。また、ハドロン少数多体系に対する構造計算を行い、クォーク模型に特徴的な性質は何かを、以下の通りに調べた。 1.クォーク内部自由度に由来するハドロン間ポテンシャルの非局所性の影響を、逆散乱問題より得られるオンシェル同等局所ポテンシャルと、核子散乱の波動関数を比較して明らかにした。 2.ストレンジネスが+1のバリオンであるペンタクォ一クを、4クォーク1反クォークの複合粒子と仮定し、2クォーク相関の影響を取り入れたクォーク模型を用いて調べた。一番軽い質量になると予想される全角運動量が1/2の状態は、核子-K中間子散乱状態との重なりが大きく、クォーク相関の影響を加えても崩壊幅が大きくなり、観測される狭いピークを説明できない一方、次に軽いと予想される全角運動量が3/2の状態は、崩壊にテンソル力が必要で崩壊幅が狭くなると予想され、観測される状態に対応する可能性があること等を明らかにした。更に、インスタントンに起因するクォーク間相互作用を導入すれば、観測された軽い質量が再現される可能性を示した。 3.X(3872)中間子に、正パリティ、スピン1の2クォーク2反クォーク状態(qqbar-ccbar)を仮定し、同様にクォーク模型を用いて調べ、2中間子の分子的状態と短距離部分の引力的なクォーク多体系状態の重ね合わせとして表せることを示した。 4.A(1405)、及び、他の負パリティのバリオンを、バリオンーメソンの散乱問題における共鳴状態として調べた。軌道部分が励起したクォーク3個の状態を「連続状態に埋め込まれた極」として散乱状態に混合させたクォーク模型を用いて解くと、観測されるA(1405)に対応する共鳴状態が得られることを明らかにした。
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