研究概要 |
本研究の目的は(a)K^-+d→π+Λ(Σ)+N,(b)K^-+d→K^++Ξ+N,および,^3Heを標的とした同様の反応の解析を行い。終状態におけるΛN-ΣN相互作用およびΞN-ΛΛ-ΛΣ-ΣΣ相互作用の知見を得ようというものである(Nは核子の略)。 90年代半ばより,少数核子系物理学で開発されてきた技術がハイパー核に応用され,軽いハイパー核の厳密計算が行なわれるようになった。^3_ΛH,^4_ΛH,^4_ΛHeなどの解析がそれである。中間子交換描像によるΛN-ΣN相互作用は,^3_ΛHの結合エネルギーを再現することに成功した。しかし,^4_ΛH,^4_ΛHeに対する最近の厳密計算では,どの相互作用模型も結合エネルギーを定性的にさえ再現できないことが判明した。この相互作用を理解する上で重要なことは,Σ閾値近傍で信頼にたる理論,実験両面からの解析を行なうことである。上記(a)の解析は,その有望な対象である。また,最近のハイパー核研究の中で注目すべき進展は,^6_<ΛΛ>He等のデータから,Λ-Λ等S=-2のバリオン間相互作用の情報が得られようとしていることである。この点においては,核子間相互作用の研究において成功を収めた中間子交換模型が予言能力を示しえていない現状に対し,クォーク・クラスター模型(京都大・藤原らによる)が一定の成果をあげていることに注目したい。上記(b)の反応は,S=-2の2バリオン系を生成し,かつ厳密計算が可能な過程である。 本年度の成果として,まず,素過程K^-+N→π+Λ(Σ),K^-+N→K^++Ξに対して,on-energy-shell上で作られたE.Oset, A.RamosらのChiral unitary法による振幅を用い,そのoff-energy-shellへの拡張を行なった。これは,宮川がBarcelona大学を訪問し,Ramosとの協力の下に行なった。また,2バリオン系に対するクォーク・クラスター模型(RGM)で得られたRGM核をこの反応で用いるために,宮川は藤原と協力して計算コードに取り入れることをほぼ完了した。さらに,宮川は,W.Glockleと協力し,K^-+d反応の相対論的定式化を行なっている。
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